わが国における地域通貨への取り組みは300件を超えるといわれる。今回の調査により、中国地方では検討中のものを除いて27件の事例を把握することができた(2004年1月時点)。しかし、継続しているとみられる事例はこのうち4件ないし5件にすぎない。多くは流通実験にとどまっており、なかには地域通貨とは呼べない事例や継続していても実質的に休止している事例が少なくない。地域通貨の流通が長続きしない理由として、地域通貨の意義が十分に理解されていないこと、適切な指導・助言者がいないこと、事務局機能が弱いことなどが考えられる。稼働中の事例が限定されていることもあって、地域通貨による地域経済への影響に関する実証的研究は少ない。今後、地域通貨によるコミュニティ・ビジネスやコミュニティ・ファイナンスへの応用なども視野に入れながら、その実態を着実に研究していく必要がある。