わが国の国土政策においては「国土の均衡ある発展」という考え方が基調をなしてきた。この言葉には本来はすべての地域が相等しく発展するという意味合いはなかったにもかかわらず、さまざまな使い方がされ混乱をもたらしてきた。広義のナショナル・ミニマムと同一視されることもあった。国は「国土の均衡ある発展」という言葉でもって地方への関与を強める一方、地方の側は国に依存する結果となった。わが国において地方分権が進まないのは、「国土の均衡ある発展」という理念に対して国・地方の双方が過度にコミットしすぎていた面もある。しかし最近になって、「国土の均衡ある発展」の代わりに「地域の個性ある発展」、ナショナル・ミニマムの代わりに「ローカル・オプティマム」という言葉が使われるようになっている。「地域の個性ある発展」という考えは、政策目標というより個別の政策目標を総称した表現とみなす必要がある。「ローカル・オプティマム」の考えが登場してもナショナル・ミニマムの考えがなくなるわけではない。ナショナル・ミニマムを維持しつつ、地方が自らの責任と選択によって「ローカル・オプティマム」を設定できるよう税財源をも含めた地方分権を進める必要がある。