環境問題への注目が集まる中、近年"持続可能な発展"を経済・社会発展の側面へ取り入れようとする動きが急速に広まっている。欧州連合(European Union, EU)においては、従来、部門ごとに環境への影響が考慮されてきたが、1998年に開始されたカーディフ(Cardiff)プロセスでは、部門別政策を環境政策と調和させることが第一義的に目指されることとなった。共通運輸政策については、2010年を期限とする輸送分担率の改善という目標が合意に至っている。これは、一見相反する目標と捉えられている効率性と環境問題への対応を両立させる試みである。本稿では、欧州における共通運輸政策と環境政策との政策統合(持続可能な運輸政策)、すなわち環境政策統合のプロセスを明らかにするとともに、企業活動のもたらす環境への影響にも着目し、欧州の運輸に関わる環境問題の現状と政策の方向性について明らかにする。