本稿の目的は、日本の自動車部品産業における企業の技術能力形成の特質について考察することである。本稿では、分析概念として製品アーキテクチャを導入し、自動車部品の技術特性が部品メーカーの技術能力の形成に与える影響を考察する。製品アーキテクチャとは、製品システムの機能要素と物理構造との組み合せに関する設計構想であり、モジュラー型と統合型に分類される。自動車部品の多くは、統合型アーキテクチャである。統合型アーキテクチャの下では、製品システムの一貫性を実現するために、部品間・工程間・企業間で継続的な調整を必要とする。そのため、技術能力の形成は、システム構成要素間の調整機能を充実させる方向に進化する傾向がある。本稿では、専門部品メーカー2社の事例分析を行い、事例企業において調整機能を実現させるためにいかなる取り組みがされているか、また製品アーキテクチャの相対的違いが技術能力の形成にいかなる影響を与えているかを考察している。