生後7カ月の中ヨークシャ一種の去勢牡豚(生体重100 kg) から,右背ロース部(Back and Loin) 5. 65kg を採取し,皮下脂肪部と赤肉部に分けて実験に供した.
(1)皮下脂肪2. 64kg は等量の蒸留水と共に,攪拌しながら2時間半煮沸蒸留した.水冷却トラップに捕集された低沸点化合物を含む留出水は, 2N ‐燐酸でpH3に調整したあとイソベンタンで抽出して,イソベンタン可溶部と不溶部に分けた.イソベンタン可溶部は,貯蔵容器の上部気相をとって水素炎型ガスクロマトグラフィーで分析した.一方不溶部は5部に分けてそれぞれ誘導体に導き,カルボニル化合物,アルコール,塩基性,酸性および硫黄化合物を分析した.イソオクタン, n-オクタン,アセトアルデヒト,プロピオンアルデヒド, n-プチルアルデヒド, イソバレルアルデヒド, イソヘプチルアルデヒド, グリオキザール,アセトン, メチルイソプロピルケトン, メチルイソプチルケトン, ジアセチル,メタノール, イソプロパノール,第二ブタノール,第三プタノール, nーベンタノール,第三ベンタノール, イソノナノール, イソデカノール, nープロピルメルカプタン, イソアミルメルカプタン, アンモニア,ギ酸イソプロピル,酢酸エチル,酢酸n プロピル,酢酸,プロピオン酸, n- 酪酸,イソ酪酸, n-吉草酸およびイソヘプタノイック酸の存在を確認した.
(2) 赤肉1.84 kg も皮下脂肪と全く同様にして水蒸気蒸留,イソベンタン抽出を行なって分析した.GCでは2個の小ピークを検出したのみであったが, 誘導体分析においてはn- ブチルアルデヒドおよびイソプロパノールを検出しなかった以外は,成分的にほとんど差異を認めなかった.
(3) イソベンタン可溶部のTLCにおいて,赤肉はトリグザセライドおよびコレステロールエステルに富み,皮下脂肪は不飽和脂肪酸に富んだ.窒素含量は皮下脂肪の方が約5倍多かった.