砂礫給与鶏において筋胃の収縮運動が活発になる原因を調べるために,砂礫給与が筋胃の発達および化学組成,特に筋胃の収縮カに関係のあるミオフィブリールの量に及ぼす影響を検討した.
1) ブロイラー兼用種の雛100羽を砂礫給与区および砂礫無給与区に分かち,砂礫給与の有無以外は同一の飼養条件で8週間飼育した.
2) 育雛につれて摂取される砂礫の量および大きさが大きくなるが, 6週令時を越えると摂取量が低下する.糞中に排池される砂礫の大きさは摂取された砂礫よりも小さい傾向があるがかなり大きいものも認められた.
3) 砂礫給与区における増体重および飼料効率の改善は殆ど認められなかった.
4) 砂礫給与区では8週令時において筋胃の発達が著しかった.即ち,砂礫無給与区の筋胃筋肉重が19.7g,粘膜重が1.77 g,筋胃の縦軸が4.74cm,横軸が4.01 cm. 厚さが2.31 cm,筋胃筋肉の全窒素量が1.44g であるのに対し,砂礫給与区ではそれぞれ, 27.3 g, 2. 25g, 5. 20cm,4.73cm,2. 65cm, 2.06gであった.尚筋胃内の砂礫の滞留量は4週令時においては2. 36g, 8週令時においては7.40g であった.
5) 筋胃の全窒素に占めるミオフィブリール態窒素の割合は, 4週令時においては,砂礫給与区では36.3% ,無給与区では35.4%, 8週令時においては,砂礫給与区では35.8%,無給与区では34.9%となって,いづれも砂礫給与区の方が僅かに高く,両区共に4週令時の方が僅かに高い.しかし差はいづれも有意ではなく,砂礫給与が発育中の雛の筋胃筋肉のミオフィブリールの割合に著しい影響を与えるとは認められなかった.一方,砂礫給与区の筋胃の発達は非常に著しく,筋肉の収縮カに直接的な関係があるとされているミオフィブリールの絶対量は非常に増加しているととになるから,砂礫給与鶏において筋胃の収縮運動が活発になる一因は,筋胃筋肉のミオフィブリール含量の著しい増加によるものと考えられる.