広島大学水畜産学部紀要 7巻 2号
1968-09-30 発行

近年における粉乳中の腸球菌の変化

高橋 秀夫
本文ファイル
抄録
 本邦各地の6乳製品工場から送付されてきた前後3回5年聞にわたる同一工場由来の粉乳について,腸球菌の陽性率,菌数および菌型の変化を検討した.その結果は次のとおりであった.
1) 腸球菌の陽性率は工場毎に違いはあるがそれぞれにおいて同じような傾向を示し,陽性率の高い工場は3回共高く,低い工場では常に低く著変は認められなかった.
2) 腸球菌陽性検体の菌数は,ほとんどが103 以下で漸減の傾向にあったが,これも大きな変化は認められなかった.
3) 分離腸球菌の型別の成績では, 3回の調査で菌型の変化している例もあったが, 3回共同じ菌型が主要薗として出現している例も多く,全体としてはやはりNo.5 型のStr. faecium が最も多数検出された.
 以上,粉乳の腸球菌の出現状況から近年の乳製品細菌叢の変化を検討すると,全般的には菌数は減り
つつあるが,余り大きな変動は無かったものと推定された.
内容記述
本研究の一部は,森永奉仕会研究奨励金によった.ここに併せて謝意を表する.
本報の要旨は第14 回日本食品衛生学会(昭和42 年11月,岡山)において発表した.