広島大学水畜産学部紀要 7巻 1号
1967-07-31 発行

走島の漁業 : Ⅱ. ウマヅラハギNavodon modestus(GÜNTHER)の産卵生態

Fisheries in Hashiri-shima : II. Spawning of a file-fish, Navodon modestus (GÜNTHER)
村上 豊
遠部 卓
本文ファイル
抄録
 瀬戸内海中央部における重要魚類の産卵生態に関する研究の一環として,備後灘におけるウマヅラハギNavodon modestus (GÜNTHER) の産卵について調査を行なった.
 備後灘では毎年4-6月の3ヶ月間にわたって,主として島嶼部周辺に設置される桝網によって,多量に本種が漁獲される.この時期のウマヅラハギは,発達した卵巣を有するから,産卵群と考えられる.
 3月より5月までにえられた数標本の卵巣を観察すると,時期の推移とともに卵巣の急速な発達がみられる.卵巣卵の卵径頻度分布からみると,本種の産卵はl同で終わるものではないことが推定された.
 ウマヅラハギの漁獲量は岸寄りの網に多く沖合の網lこ少ないこと,またその卵の性質などからみて,本種は島嶼部の沿岸で産卵するものと推定し,島艇部周辺のガラモ場よりガラモおよび底質を採集して産着卵の有無を精査した.
 1963年6月初旬,走島のガラモ中より92個の卵が発見されたが,これらは形態,構造,大きさなどから,ウマヅラハギ卵と同定された.このことから,ウマヅラハキ、は,少なくとも島嶼部沿岸のガラモ場を産卵場として利用していることが明らかとなった.
 なお,ウマヅラハギの卵は,天然では室内で観察されるような強い粘着性を示さない可能性のあることを示唆した.