広島大学水畜産学部紀要 6巻 2号
1966-12-20 発行

腸炎ピプリオの海底層別分布の検討

A study on the vertical distribution of vibrio parahaemolyticus in sea bottom
浅川 末三
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抄録
 腸炎ビブリオVibrio parahaemolyticusの底質における垂直分布状態、を知るために, 人工海底へ本菌を接種した実験,及び天然海底を垂直的に採泥した調査を行なった.その結果次のことが推定された.
(1) 本菌の生物1型菌は, 底質の表層部に棲息分布しても深層部lこは生存し難い.この傾向は砂質において特lこ強かった.従って,前報で使用した採泥器の性能に砂質で1型菌が高率に検出された.
(2) 生物2型菌は底質の砂・泥質にかかわらず,叉浅・深層に広く生存し得る.従って, 前報で2型薗が砂・泥質lこ広く検出された.
(3) 生物1型菌が棲息する所lこは2型菌も分布する傾向があった.
(4) 生物1型菌あるいは2型菌の生存とその環境底質のpH及び酸化還元電位とは,殆んど相関が認められなかった.
(5) 泥質は,砂質に較べ有機物や窒素源が多量に含まれていた.このことは,本菌の分布と重要な関係があるものと考えられた.