広島大学水畜産学部紀要 6巻 2号
1966-12-20 発行

Non-hereditary crooked beaks in poultry

家禽における非遺伝的畸形嘴について
Watanabe, Moriyuki
本文ファイル
抄録
 本実験においては非遺伝的畸形嘴と思われる三例に遭遇した.その一つは大阪アヒルにおいて認められ,他の二つはニワトリのembryo において認められた.
 大阪アヒルは孵卵開始後25日目に約3時間の停電に遭遇した卵から28 日目に孵化したもので,約1年間育成しその畸形嘴の発育状態および精液の一般性状について観察された.畸形嘴の度合は日数の経過と共に著明となったが,精液の性状については何等異常は認められなかった.
 ニワトワにおける畸形嘴の一例は孵卵開始後9日目に約4時間の停電に遭遇した卵を瞬卵15 日日に破殻したembryo において認められたものであり,他の一例は破殻3日前から1日6回,約10分間孵卵温度を低下した卵を孵卵10日目に破殻したembryo において認められたものである.前者は一方の無眼球症を伴なった上嘴畸形を示し,後者は一方の小眼球症を伴なった上嘴畸形を示した.
 これらの眼球および嘴の畸形は共に好ましからざる環境要因によって誘起されるものと思われるが,直接との非遺伝的畸形に包含されている因子ならびにその機構についてはよくわからない.