アリアケドロクダムシ (Corphium acherusicum COSTA) はヨコエビ亜目 (Gammaridea) , ドロクダムシ科(Corophiidae)に属する端脚類であって, 内湾などに多くみられる.本種はいわゆる管棲端脚類の一種で,海中の浮泥などを用いて棲管を形成し,その中に棲息するという特異な生活様式を有する.
福山港付近において,本種の極めて高密度な群衆が認められたので,連続的採集,観察を行った結果,次のような生態的知見が得られた.
1) 棲管の乾燥重量1g当りの個体数をもって示した群衆密度には,季節的変動が認められ,6月に顕著なピークを形成する.この時期には1g当り1,000個以上という極めて高い密度を示す.
2) 雌雄とも,体長は冬期に大きく夏季に小さい. このことから年間を通じてみると,体長が大きく寿命の長い越冬世代(大型長期世代)と, 体長が小さく寿命の短い夏世代(小型短期世代)の二者に大別することができる.
3) 産卵は周年ひき続いてみられる. しかし産卵活動は3月-7月中旬に最も活発で10月-11月がこれに次ぎ高く,盛夏および厳寒期時には,かなり低くなる傾向がみられる.
4) 抱卵雌の体長(L,mm) と抱卵数(N) との関係はN= 0.28L2.98なる指数式で示される.
5) 性比は年間を通じて平均すると雌1. 6:雄1の割合であり,雌の方が常にやや多い.
6) 管棲端脚類の生態的意義について,主として汚染生物及び飼料動物としての重要性を中心に,述べた.