広島大学水畜産学部紀要 6巻 1号
1965-12-20 発行

乳牛の管理方式に関連した作業動線と作業時間の研究

Chore labour study in relation to dairy cattle management systems
吉本 伝
三村 耕
藤井 信也
本文ファイル
抄録
 乳牛の飼育管理が,放し飼い方式と繋ぎ飼い方式で行なわれる2つの乳牛舎で,飼育管理作業を検討する目的で, 1964年12 月から1965 年1月の間lこ作業時間と作業動線を調査研究した. その結果を要約すると次の通りである.
1) この時期には1日1 頭当りの作業時間は,放し飼い方式40.3分,繋き飼い方式35.0 分であった
2) 放し飼い方式と繋ぎ飼い方式における搾乳,給飼,敷わら交換と清掃のそれぞれの作業時聞は,21. 7分と20.6分, 5.8分と5. 7分, 8.5分と5.0分であった.
3) 放し飼い方式における搾乳作業のうち幾つかの要素作業は,頭数が増加しでも殆んど変動しない性質のものである.したがって搾乳頭数が20頭以上になれば,繋ぎ飼い牛舎の搾乳作業時間程度になる.
4) 放し飼い方式と繋ぎ飼い方式の作業動線を比較すると1日1頭当り489m と402m で放し飼い方式が多かった.搾乳作業の時間と動線は1頭1回当り10.9分と83m,10.3分と12mであった.
5) 敷わら交換および清掃作業は,この作業の反覆回数と作業面積から延面積で比較すると, どちらの管理方式でも1000m2当り約100 分の時間と約1900mの動線を必要とした.
6) 以上2つの管理方式を比較して,必ずしも放し飼い方式が省力的であるとはいえなかった. その原因は放し飼い方式としては飼育頭数が少なくないこと,管理作業の体系が充分確立されていなかったことによるものであろう.