広島大学水畜産学部紀要 6巻 1号
1965-12-20 発行

潮岬近海の春カツオ漁場について

A note on the fishing ground for the spring skipjack fishing in the vicinity of Shiono-misaki, Wakayama Prefecture
西川 定一
本文ファイル
抄録
和歌山県湊浦漁協の漁獲努力ほぼ一定とされる1953年~1960年の聞の紀南沖合の竿釣漁業による毎年
4月から7月迄の毎月カツオ漁獲量と潮岬近海の水温分布の模様を気象庁海況旬報により比較検討し
た.
1) 潮岬近海に冷水塊が出現しその周辺に温度勾配急な潮境が見られるとその付近に多くはカツオの
好漁場が出来る.冷水塊の位置が潮岬の東叉は南東であれば豊漁,南側に進出すると潮境の位置によっ
ては不漁となる.
2) 潮岬の束側に冷水塊がなく,等温線が東西に,叉は南西から北東に長く平行に走っていて,その
等温線が潮岬のすぐ東側叉ははるか東方洋上において北に向って凸部をつくると潮岬付近は多く不漁と
なった.潮岬東側において等温線が南に向って凸部をつくると潮岬では豊漁となる.この場合は多く冷
水塊が出現した場合に見られた.
3) 漁況の盛衰が気象庁全国海況旬報の温度分布図から解釈できることを指摘した.しかし,一,二
の解釈できない例外があった.この例外を更に各旬間の等差温度線図によって若干解釈することができ
たが,まだ充分でなかった.その他多数の等温線図によって解釈できた各年の各月各旬の漁況を旬間の
等定温度線図によって解釈しようとするとかなり困難な場合があった.