鳥類の卵の卵表の色素形成については,いまだ不明確な点が多いが,うずらを用いて色素形成に関する形態学的観察をおこなった.
うずら卵管では肉眼的に,子宮に限って著明な濃褐色の着色と赤色螢光がみとめられ,これは凍結切片上その粘膜上皮lこ存する.これは産卵時期により変化し,白色卵殻の卵を子宮lこ含むときもっとも著明であるが,着色した卵を含むときもっとも弱い.一方,卵表の色彩はクチクラ色素により発現され,この色素は赤色後光を発する.子宮およびクチクラの色素は共に鉱酸lこよく溶解し,強い2次後光を発する.両者の主としてメチルエステルの吸収スベクトルを求めた結果,それぞれSORET 帯を有し,porphyrin であることを示し,かつFISHER & KÖGLのooporphyrin と類似のスベクトルを示した.
組織学的には,色素は子宮粘膜上皮の繊毛細胞(apical cell) に認められる.この色素穎粒は産卵時期に伴って著変し,肉眼的ならびに凍結切片上の所見と一致する.従って本細胞からクチクラ色素が分泌されると考えられる.
また本細胞にはPAS 反応陽性の粗大穎粒が認められ,色素頼粒の増減とほぼ平行した関係を示す.これは,クチクラ形成と関係があると考えられる.