広島大学水畜産学部紀要 6巻 1号
1965-12-20 発行

On the production of carbon dioxide in fish flesh during the deterioration of freshness

魚肉の鮮度低下中における炭酸ガス発生について
Asakawa, Suezo
本文ファイル
抄録
 魚肉の鮮度と肉中の炭酸ガス(CO2)量との関係を見るために,この実験は行われた.
 サパ(Scomber jatonicus) の精肉を用い,鮮度低下過程中のCO2量をアルカリ吸収逆滴定の方法で実測した結果,発生CO2量は鮮度低下の初期においては急増したが,腐敗期においては漸減した. 従ってCO2量を以てその魚肉の鮮度指標とすることは良法ではないと論じた.
 魚肉中に発生するCO2は,無菌および菌接種試験の結果,その大部分が微生物作用により, 小部分
が筋肉の自己消化作用によるものであることを知った.
 なお,微生物の脱炭酸酵素の至適pHは酸性側にあるとされているが,微アルカリ性の魚肉からも相当量のCO2が発生した.これについて,微生物の脱炭酸酵素は適応酵素であるから, 例えば遊離のアミノ酸などの基質が豊富に存在するならば,微アルカリ性になった魚肉からもCO2は発生しうると推論した.