広島大学水畜産学部紀要 5巻 1号
1963-12-20 発行

Three types of native swine in Taiwan and their descents

台湾土産豚の三型とその起源について
Yamane, Jinshin
Chen, John Y. K.
本文ファイル
抄録
 過去3世紀にわたり,台湾島住民の生活と切り離し難い関係をもっていた家豚は,時代の進速に伴い他品種との交配が行われ,固有の体型を失いつつあり,台湾土産豚は今や地上から姿を消す寸前にあるといっても過言ではない。
 本報告は東洋古来の家畜の起源攻究の一環として,台湾土産豚の形態と起源について記載且考察したものである。
 次にその結論のみを要約する。
1. 1940年以前の台湾においては,島民によって古くから畜養されていた豚は外貌上明かに3種類あった。すなわち,中型黒色崎面豚(ー名桃園種),小型赤色豚および小型黒色豚がそれである。
2. 3型の中,崎面豚は頭骨学的に見て,明かに短頭型に属し,小型黒色種は長頭型であり,赤色豚は両者の中間に位する。
3. 崎面豚の前頭部と鼻部および体側に出現する皮膚の摺袋は一種の遺伝形質であって,華南産家豚の無摺裳のものから突然変異によって生じたものと推定される。この華南豚は恐らく華南産野猪 Sus scrofa chirodonta HEUDE の畜化されたものであろう。
4. 中国大陸のうち,華南以外の地域並びに印度支那,ヒリッピン等東南アジアにも,崎面豚を見ないから,乙の豚の原産地は華南の何れかの地方と考えられるが,台湾崎面豚に関する限り,広東,福建の両省からの移住者の携行したものの直系後脅であることは疑いない。
5. これに反して,赤色豚と小型黒色豚は輸入された華南豚の直系子孫ではなく,多かれ少かれ台湾産野猪 Sus taivanus SWINHOEと血縁関係をもっている。すなわち,赤色豚の原型は華南豚系であるが台湾野猪の混血によって赤毛色となり,小型黒色種は原型が台湾野猪であり,黒色化したものと思われる。
6. 台湾の高山族はオランダ人占拠以前既に野猪を畜化飼養していたが,それは突然変異による赤色豚であったことは,史実によって推定される。渡来した漢民族が高山族と接触するに及び,輸入された華南豚と台湾野猪叉はその畜化型とが雑交することは自然の勢である。骨格学から見ると小型黒色豚は赤色豚よりも一層野猪に近縁であると推論される。
7. 1916年以降,台湾総督府は土産豚の改良に着手し,パークシャ一種豚を輸入して土産豚との聞に雑種繁殖を行った。その結果,能力増進の反面,土産豚の形質は逐次消失し,固有の体形をもつ生豚を見ることがすこぶる困難となった。
8. 台湾豚起源の追究に関連して華南,華北並びにその周域の家豚をも討議の参考資料とした。