広島大学水畜産学部紀要 14巻 1号
1975-08-30 発行

Zinc- Complexes of Histidine and the Related Compounds in Aqueous Solution

亜鉛とヒスチジンならびにその関連化合物との錯体生成について
Imamura, Tsuneaki
Hatanaka, Chitoshi
本文ファイル
抄録
食品やその原料となる生物体には各種の金属元素とともに,多くの酸素-および窒素-配位子が含まれる。そこで金属元素の挙動を知るためには,これら金属-配位子の錯体形成に関する知識が必要となる。本報では,pHの異なる各種溶液中で生成するZn-HisおよびZn-含Hisジペプチド錯体について,電位差滴定曲線に基づいて考察した。考察の中心は,Zn錯体形成に関与する配位基と溶液のpHの関係であって,遊離Hisならびにペプチドの構成単位となったHis残基に分けて検討した。

まず,pH6以上の中性およびアルカリ性溶液中ではイミダゾール-NHとα-NH2が配位することを推測し,Fig.2の式IIIを示した。またHistaおよびHisMeと比較することによって,α-COOH基の影響もあり得ると考え,式VIIを示した。

次に,全く側鎖をもたないGlyとHisから成るジペプチドすなわちHisGlyおよびGlyHisを比較し,さらにGlyGlyと比べることによって,イミダゾール核がZn錯体を安定化させ,Zn(OH)2の沈澱形成をかなり抑制することについて考察を加えた。

この種の報文は少なく,とくにHisを含むペプチドとZnの錯体生成に関する報文は始めてのものである。