広島大学水畜産学部紀要 12巻 2号
1973-12-20 発行

豚肉の保水性に関する研究 : 第1報 各種食品添加物が保水性と肉中のゾル状筋タンパク質の分布におよぼす影響

Studies on the Water-Holding Capacity of Pork : I. Effect of various food additives on the water-holding capacity of pork and on the distribution of muscle proteins existing in sol state in pork
朴 亨基
上 隆保
世良 尙
本文ファイル
抄録
各種食品添加物が塩漬豚肉の保水性と肉中ゾル状筋タンパク質の分布におよぼす影響を明らかにするため豚肉の背最長筋を用い研究が行なわれた.今回の実験で得られた結果の要点はつぎのとおりである.

1. 豚肉に食塩2.00%を添加し塩漬した場合,肉の保水性と肉中ゾル状筋タンパク質の全タンパク質,ミオシンおよびアクトミオシンなどが無添加のものに比較し著しく増加した.また硝酸カリウム0.10%,亜硝酸ナトリウム0.02%を食塩2.00%と共に混合添加した場合は,食塩2.00%だけ添加したものよりやや低値を示した.
2. 豚肉にソルビン酸カリウム0.20%を添加し塩漬した場合,保水性とゾル状に存在する筋タンパク質の量は,これらを添加しないものに比較しやや増加することが認められたが,AF-2 0.025%を添加した場合は変化が認められなかった.
3. 豚肉にピロリン酸ナトリウム0.30%,トリポリリン酸ナトリウム0.30%,ヘキサメタリン酸ナトリウム0.30%を,それぞれ添加し塩漬した場合,いずれの場合も肉の保水性,ゾル状筋タンパク質および肉のpHが著しく増加した.特にトリポリリン酸塩の作用効果が一番顕著で,つづいてピロリン酸ナトリウム,ヘキサメタリン酸ナトリウムの順であった.
4. 豚肉にアスコルビン酸ナトリウム0.03%,エリソルビン酸ナトリウム0.03%を添加し塩漬した場合,肉の保水性に顕著な変化は認められなかったが,肉中ゾル状筋タンパク質の分布において,全タンパク質,アクトミオシンがやや増加しミオシンはかなり減少した.
5. 豚肉にエリソルビン酸ナトリウム0.03%,トリポリリン酸ナトリウム0.30%,ソルビン酸カリウム0.20%,AF-2 0.025%を混合添加し塩漬した場合,肉中のゾル状に存在する筋タンパク質,肉の保水性およびpHが大いに増加した.特にゾル状のアクトミオシンの増加が顕著であった.

以上の結果から,豚肉に各種食品添加物,特に食塩とポリリン酸塩の混合添加により肉のpH,保水性は顕著に増加することが認められ,この場合肉中ゾル状に存在する全タンパク質,ミオシン,アクトミオシンなどが増加し肉の保水性を増加するものと思考され,特にアクトミオシンの増加と肉の保水性との間には密接な関連が認められた.
内容記述
本報の要旨は,第62回日本畜産学会大会(昭和48年8月,岩手大学)において発表した.