広島大学水畜産学部紀要 10巻 2号
1971-12-25 発行

ミオシンおよびミオシンサブフラグメントの熱変性

Thermal Inactivation of Myosin and It's Subfragments
川上 英之
本文ファイル
抄録
1. DEAE-Cellulose Columnによって精製したミオシンと生物活性をもったミオシンサブフラグメント(HMM-5,HMM-10,S1,S1-n)についていろいろな条件で変性の状態を検討した.
2. ミオシンサブフラグメントのATPaseの失活の中,pH,温度依存性はほとんど同じであったが,反応速度はより小さいサブフラグメント(S1,S1-n)になるにつれて速くなった.
3. ATPaseの失活にイオン強度依存性はミオシンおよびミオシンサブフラグメントとも生理的条件で(I=0.1)最も安定であった.また,ミオシン分子の安定性に尾の部分が大きく貢献していることが判った.
4. ATPaseの失活にともなう分子の不可逆的な凝集反応は本研究で検討した全ての変性反応にみとめられたが遊離のSH基は本反応とは全然無関係であることが確認された.
5. 熱変性の過程でHMMやS1から小さなサブユニフト(g-サブユニット)の遊離は確認出来なかった.
6. S1を試料として用いた場合,超遠心による沈降速度の分析およびSephadex G-200によるゲル濾過の結果から測定した変性の一次反応速度定数はATPaseの失活の速度定数と良く一致した.
7. グルコースとATPはミオシンおよびミオシンサブフラグメントのATPaseの失活の阻害剤として作用したがピロリン酸の限害効果はミオシンがしだいに小さなサブフラグメントに分解されるにつれて減少した.
8. ミオシンの変性におよぼすピロリン酸の影響および変性過程における分子間の相互作用等に関する可能な機構についての考察がおこなわれた.
内容記述
本論文はJ. Biochem., Vol.10, No.4(1971)に掲載された論文に未発表のDataを加えて,総説として発表するものであり,北海道大学審査学位論文である.