第1報,第2報において短日処理法および短日処理・ホルモン処理併用法により,合計27頭の子羊を季節外に生産したことを報告した.これらのうち21頭を常法により1年間(雌),6カ月間(雄)飼育し,その発育・成長および皮膚面積の発育を測定した,この結果を試験期間中に行なった正常羊の試験結果と併せ検討することにより,極めて明瞭に子羊の発育および成長に及ぼす季節の影響を解析することができたので報告する.
1. 生後3月令までの早期発育においては,正常羊と季節外生産羊との間に発育パターンに差違はみられなかった。このことから子羊の早期発育においては,内因的要因,母乳(主として同品種・系統では個体的要因に属しまた在胎中の母羊の栄養と関係する)その他の要因が外部環境より強力に作用すること,そしてこの時期がBRODY(1945)のいわゆるaccelerating-phaseと関連することを暗示している.
2. 三村(1956)の提唱した発育における屈析転向点としての3月令の意義は,秋季生産羊では4月令に延長されていたが,3月令以後春季環境にあったためと理解された.
3. 増体重および体長その他の成長において,3乃至4月令以後はその季節環境によりそれぞれプラス,マイナスの影響をみることができた.特に春季はプラス,夏季次いで冬季はマイナスに作用していた.体高比成長により検討した結果は体型にも影響することが知られた.
4. 皮膚面積増大率は発育における傾向と似ているが,より拡大して示される.
5. 季節外生産羊を産業的に生産できるなら,秋季生産羊が本試験の結果からみて,最も有利な発育・成長をとげるであろうことは興味ある知見と思われる.