広島大学生物生産学部紀要 26巻 1・2号
1987-11 発行

瀬戸内海産コイチNibea albifloraの食性

On the food habits of Nibea albiflora in the Seto Inland Sea
中井 和夫
角田 俊平
具島 健二
本文ファイル
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抄録
瀬戸内海の中部で1977年3月から'79年6月までの間に採集した323尾のコイチについて、空胃またはそれに近い状態にあった個体120尾を除き、体長49~435mmの203尾の個体の胃内容物の種類とその個体数を明らかにした。さらにそれらの中で胃内容物が未消化であった個体153尾については、各個体の胃内容物全重量と餌生物の種類別重量を測定した。得られた結果は次の通りである。

1) 胃内に出現した生物は魚類、甲殻類(橈脚類、アミ類、クマ類、端脚類、オキアミ類、十脚類、口脚類)、腹足類、頭足類(十腕類)、多毛煩、螠類、藻類であるが、出現頻度、個体数、重量のいずれについても特に多い魚類とエビ類が最も重要な餌生物であり、次いでアミ類が重要である。

2) 胃内容物組成は、出現頻度では魚類51%、エビ類52%、アミ類23%、個体数比では魚類17%、エビ類58%、アミ類20%、重量比では魚類46%、エビ類33%、アミ類1%であった。

3)コイチの成長に伴って胃内容物の種類組成が変化するとともに、餌生物の種類数は成長とともにやや減少する傾向がある。重要な餌生物は、体長40~79mmの0年魚ではアミ類、小型エビ類(主としてテッポウエビ類、ヒラツノモエビ、エビジャコ、クルマエビ科のエビ1種)、小型魚類、体長80~139mmの0または1年魚では魚類、エビ類(主としてアキアミ、テッポウエビ類)、体長140~199mm の1年魚では魚類、エビ類(主としてテッポウエビ類、エビジャコ)、そして200mm以上の成魚では魚類であって、中でも体長200mm以上の個体になるとイカナゴが極めて重要である。

4) 捕食者であるコイチと被食者(エビジャコ、魚類)の大きさとの関係については、大きいコイチほどより大きい餌生物を捕食する傾向が認められる。そして両者の関係は、コイチとエビジャコよりもコイチと魚類との間でより明瞭であって、被食魚類の全長は捕食者であるコイチの体長の約1/5~1/3である。

5)瀬戸内海中部に生息するコイチとシログチの胃内容物について比較、検討した結果、両種の食性はほぼ等しく、同海域の底魚群集の中での食地位は魚食性魚類に次いで高位にあり、魚類・甲殻類食性とすることができる。
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