子どもの生活を学習対象とする生活科は,子どもや教材を中心に研究が進められ,授業をデザイン・実施する主体である教師の姿が隠されてしまう傾向にあった。そこで,本研究は,A教師が行った単元「まちたんけん」のデザイン・実施のナラティブを記述・分析し,生活科における教師の役割を考察するケース・スタディーを行う。具体的には,ゲートキーピング論から理論的フレームワークを抽出し,それをもとに学習指導案,授業参観のフィールドノート,ワークシート,事例児童とのインタビュー,教師とのインタビューを収集し分析した。本研究の成果として,①生活科「でも」教師のゲートキーピングが授業デザイン・実施において重要な位置を示すことを明らかにし,生活科における新たな研究領域の可能性を提案したこと,②生活科「ならでは」のゲートキーピングとして,「ゲートキーパー」「案内者」「交渉者」の3つの教師の役割を指摘したことが挙げられる。