廣島大學經濟論叢 35巻 1号
2011-07-20 発行

契約の保証装置としての社会・文化制度 <論説>

Social Norms and Cultures as a Commitment Device of Contracts <Articles>
井上 正
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抄録
契約の不完備は市場取引か内部取引かの意思決定を迫ることになる。Grossman & Hart(1986)は、残余コントロール権と所有権の配分の不整合は、所有権の再配分を行うことで解決されるとしている。そして、誤った所有権の配分は、残余コントロール権の統制・掌握に失敗することになり、そして、生産活動に歪みを生じることを指摘している。しかし、現実には、常に、資産の内部化により、残余コントロール権の統制・掌握がなされているわけではない。契約を介した市場取引による残余コントロール権の統制・掌握が多々みられる。これは、契約の不完備を補完する社会・文化制度が、資産の所有者が利己主義的プレーヤーと化すことを抑制するからである。社会・文化制度が契約の保証装置として機能するとき、契約により残余コントロール権の統制・掌握を行うことが可能となるかもしれない。本稿では、Frank(1987)の契約の保証装置としての社会の信頼の構造のもとで、契約による残余コントロール権の統制・掌握の可能性を考察する。さらに、契約による残余コントロール権の統制・掌握が、事業領域の選択と集中を可能にすることを明らかにする。
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