中等教育研究紀要 /広島大学附属福山中・高等学校 60巻
2020-03-31 発行

数学の授業における多様性伝達アプローチ : 実践から理論への接続

上ヶ谷 友佑 広島大学附属福山中・高等学校
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抄録
本稿の目的は,数学の授業において「多様性伝達アプローチ」を用いた2つの授業実践の様子を報告し,実践の側から理論との接続を考えるための基礎資料を提供することである.多様性伝達アプローチは,授業で与えられた数学的問題を個人解決する過程で,複数の見解が実際に生じたことを教師が生徒達に伝えることによって,その後のペアトークおよび授業全体での議論を活性化することを企図した教育的手立てである.実践の様子を反省的に考察した結果,次の2点が明らかとなった.多様性伝達アプローチは,(1) 近年の数学教育におけるユーモア利用と,解釈の多様性に注目するという点で同じ構造を持ち,(2) そうした注目ゆえに,理論的観点からは,構成主義の架橋理論の1つであるD. Tallのクリスタリン・コンセプト論との接続が期待される.