広島大学総合博物館研究報告 12号
2020-12-25 発行

中国地方の中山間地域二次林と住民生活に対するニホンジカの影響 : 現状と住民意識

The impact of sika deer on a secondary forest and resident life in a mountainous area of the Chugoku District: Present status and residents’ awareness
中坪 孝之 大学院統合生命科学研究科 広大研究者総覧
平林 恵莉
真鍋 智子
本文ファイル
抄録
中国地方の中山間地域を対象に,野外調査と地域住民に対するアンケート調査を行い,二次林と住民生活に対するシカ被害の現状とそれを引き起こした要因について考察した。東広島市福富町を調査対象地域とし,ヒノキの大径木と広葉樹が混生する二次林で植生調査を行った。調査区内の14種180本の樹木のうち,3.3%に角研ぎ跡,7.2%に食痕が認められ, 角研ぎに関してはヒノキ,摂食に関してはリョウブに有意な嗜好性が認められた。林床の植被率は低く,不嗜好性植物のアセビが優占していた。シカ被害に関するアンケートでは,「農業被害」が最も多く,この10 ~ 20年で目撃や被害が増加しているという回答が大半を占めた。自由記述では,以前は山の手入れを行っていたが,近年は手が入らなくなったというコメントが多かった。山に入らなくなった理由としては,生活様式の変化のほか,マツ枯れによってマツタケがとれなくなったことをあげる回答者が多かった。以上から,森林利用の停止によってシカの住処となる放置林が増加したが,林内に餌植物が少ないため,人家近くにシカが出現し被害をもたらしていると推測された。
キーワード
ニホンジカ
住民アンケート
森林利用
農林業被害
マツ枯れ
sika deer
awareness questionnaire survey
forest use
agriculture and forest damage
pine wilt disease
権利情報
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