広島大学総合博物館研究報告 12号
2020-12-25 発行

ダム上流の湿地を流れる小河川に生息するオオサンショウウオ個体群 : 小型個体群と野外における幼生の成長に関する考察

A population of the Japanese giant salamander Andrias japonicus (Amphibia: Caudata) inhabiting a small stream flowing through a wetland upstream of a dam: A study on the population of small individuals and larval growth in the field
池田 誠慈
宗像 優生
佐藤 賢
三浦 昂
橋詰 宰
友田 浄
若林 なつき
桑原 一司
大川 博志
本文ファイル
抄録
広島県廿日市市飯山のダム上流の湿地を流れる小河川に生息するオオサンショウウオAndrias japonicusの個体群について報告する。本産地は標高が775–795mあり,本種の生息地で最も標高の高い部類に入る。飯山貯水池は1932年より水力発電ダム湖として建造され,その上流は約90年間ダムの下流域と隔離されている。水位の低下した2001年以降は長年人の手の加わっていない湿地となっている。2017–2020年ののべ17日間に渡る調査で,0歳から1歳,2歳と考えられる幼生が多数見つかり,全長210mmの幼体や326–680mmの成体,繁殖巣穴も見つかった。これは独立した繁殖個体群として世代交代している証拠でもある。この個体群からは全長700mmを越える個体が見つかっておらず,全長が小さい傾向がある。また,0歳幼生の全長と確認日の関係を見ると,全長46mmで離散した0歳幼生が,6月から8月にかけて急成長して75mmに達し,10月以降はほとんど成長しないで翌春を迎えることを示唆していた。幼生は主にダム湖であった当時の名残の水草,ヒルムシロPotamogeton distinctusの中から見つかる傾向がある点も特異な点である。ダム湖へ直接流入する源流域の小河川で本種が持続的に繁殖している例として本産地と個体群は稀少な存在であると言える。
キーワード
オオサンショウウオ
小型個体群
湿地
ダム
ヒルムシロ
幼生の成長
Andrias japonicus
Potamogeton distinctus
dam lake
Japanese giant salamander
larval growth
population of small individuals
wetland
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