本稿では,欧米の先進国を中心に研究が進められているライフスタイル移住の概念を整理し,日本における田園回帰を国際的な文脈で検討する際,どのような位置づけを与えられるかを議論した。検討の結果,諸外国のライフスタイル移住と日本における田園回帰の共通点として,これまでネガティブに捉えられがちであった農山村に対して都市の住民がポジティブな評価をし始め,都市と農村の関係を再考するきっかけになっていることが挙げられる。相違点としては,第1 に,海外のライフスタイル移住の受け入れ地域が移住者による消費を期待するのに対し,田園回帰論を掲げる政策論では,移住者に働き手として地域づくりへの参画を期待していること,第2 に,ライフスタイル移住では移住者自身の認識が注目されるのに対し,田園回帰を念頭に置いた農山村移住に関する研究では,移住者と地域との相互作用や両者の変化がミクロなスケールで記述されることが挙げられる。