トヨシオマリヒトデPodosphaeraster toyoshiomaruae Fujita and Rowe, 2002は体がほぼ球形で,腕が発達しないという特殊な形態を持つ小型ヒトデ類である。鹿児島県奄美大島北西部に位置する大島新曽根水深100-200 m 程度の堆に生息している。この堆はROV で観察するとカイメン類,八放サンゴ類などで覆われている。2017年5月21日に本種の生きた個体が大島新曽根で採集され,管足を伸ばした状態や歩行が観察されたのでその行動を記載した。管足を体内にしまった状態とは異なり,体がやや口・肛門軸方向に扁平になり,約1.65 cm/min の速度で歩行した。通常の腕の発達したヒトデ類の歩行速度と比較すると相対的に著しく遅い。管足には少なくとも2種類が認められ,歩行用と感覚用と考えられる。