2012年6月に瀬戸内海の3つのアマモ場の,それぞれ異なる株サイズと群落構造を示す計7地点のアマモ群落において生産量を測定,比較した。株あたりの生産量は株サイズに依存し,大きい株が相対的に低い密度で生育する生野島(広島県;安芸灘)のアマモ場で50.0-73.2 mg DW shoot -1 d-1であり,小さい株が密生する平郡島(山口県;伊予灘)の株あたり生産量(7.7-27.4 mg DW shoot -1 d-1)より大きかった。面積あたり生産量において,株あたり生産量の差は株密度により相殺される傾向もみられたが,生野島のアマモ場の生産量(2.89-5.38 g DW m-2 d-1)の方が平郡島のアマモ場の生産量(1.63-2.56 g DW m-2 d-1) よりも大きかった。これら2つのアマモ場では底質に大きな相違がみられ,アマモの群落構造や生産量に影響を与えていると考えられた。すなわち,生野島の底質はほとんど泥により構成され有機物含量も高い一方で,平郡島の底質は中砂・細砂を中心に構成されより厳しい波浪環境を反映していた。
2011年秋季のアイゴの食害による消失から回復途上にある阿波島(広島県;安芸灘)のアマモ場では新たに発芽した実生由来の株がパッチ状の群落を作り,株密度も現存量も低かった。調査した群落の中で生産量は最も低かったが(0.60 g DW m-2 d-1),その現存量回転率(6.5% d-1)は,他群落(1.7-3.3% d-1)のそれよりも大きかった。