無機炭素を含む海洋中粒子の有機炭素・窒素をCHN元素分析計で定量する場合には,予め酸処理により無機炭素(PIC)を除去する必要があるが,沿岸域試料で,酸処理なしでのCHN分析計の測定値を有機炭素と見做して報告している例が稀に見られる。そこで,瀬戸内海で採取された懸濁粒子,沈降粒子,および堆積物を用いて,酸処理の有無が粒状有機炭素(POC)の分析結果に及ぼす影響と,そこから派生する問題について検討した。一部の懸濁粒子や,沈降粒子および海底堆積物中の炭素の測定値は,酸処理なしの値が酸処理ありの値よりも顕著に高く,C/chl. a,C/N比なども過大評価されることが確認された。以上のことから,瀬戸内海を含む沿岸域試料でも,分析前の酸処理が必須であることが明らかとなった。