本研究は広島湾に生息する魚類や頭足類などの栄養段階を炭素・窒素安定同位体分析を用いて明らかにした。分析した魚類の中で最もδ15N値が低かったのはカタクチイワシとサヨリの14.4‰で,逆に高かったのはカサゴの16.8‰であった。δ13C 値が低かったのはサヨリとスズメダイの-17.6‰で,高かったのはマダイとシロギスの-15.3‰であった。頭足類を加えると,アオリイカのδ15N 値とδ13C 値は最も高く,それぞれ17.3‰と-14.8‰であった。このような種間の栄養段階の違いは,食性や栄養源の違いを反映していると考えられた。本研究結果は,瀬戸内海でも屈指の漁場として知られている広島湾において,魚類資源の持続的利用を行うために有益な知見となるであろう。