大気中有機酸の発生源である自動車および焼却炉排ガスについて,有機酸(ギ酸,酢酸,プロピオン酸,シュウ酸)濃度を測定した。ガソリン車の排ガス中有機酸濃度の相加平均値は,ギ酸59.7ppbv,酢酸327ppbv,プロピオン酸12.1ppbv,シュウ酸0.77ppbv(parts per billion by volume)であった。ディーゼル車および二輪車は,ガソリン車よりも有機酸濃度がやや高く,特に二輪車の酢酸は10ppmv(parts per million by volume)以上と高かった。広島大学東広島キャンパス設置の焼却炉排ガス中有機酸の組成および濃度は,ガソリン車と同様だった。自動車有機酸の組成及び濃度は,排気量,走行距離とは特に相関が見られず,これらは主に燃料組成,エンジン機構および排ガス浄化装置により決定すると考えられた。排ガス中有機酸の濃度比を,東広島における降水,露,大気中有機酸のそれと比較すると,降水よりも露および大気中有機酸の濃度比に近いことが示された。測定結果から,日本国内の自動車起源の有機酸年間発生量は,ギ酸3.0×109g yr-1,酢酸5.3×109g yr-1,プロピオン酸4.6×108g yr-1,シュウ酸7.9×107g yr-1と見積もられた。さらに一酸化炭素を指標として大気中有機酸への自動車起源有機酸の寄与を計算すると,ギ酸41%,酢酸18%となった。