海水中の懸濁物と,海藻の葉上堆積物は,ともに藻体表面に到達する光を質的かつ量的に変化させ,海藻の生産力に多大な影響を及ぼす。本研究では内湾域である広島湾における大型褐藻クロメの葉上堆積物とクロメ群落直近の海水中の懸濁物について,両者の光吸収係数を統一的手法(QFT法)に基づいて把握し,その特性を比較した。懸濁物と堆積物の全体の光吸収特性に明瞭な差は認められず,葉上堆積物の多くが沈降した懸濁物によって構成されていたことが推察された。懸濁物・堆積物ともに,デトリタスや微細藻類など多様な要素により構成されており,光合成有効波長域(400-700nm)のうち,短波長側の光は微細藻類の色素以外のデトリタスなどが,長波長側の光は微細藻類の光合成色素が吸収し,それぞれクロメの光吸収に大きく影響すると考えられた。