広島県西部を流れる太田川水系の筒賀川とその支流である猪股川においてアマゴ(Oncorhynchus masou ishikawae Jordan and McGregor)の鰾から線虫類のSalvelinema salmonicola (Ishii, 1916)を採集した。アマゴは本線虫の新宿主である。今回の採集によって, 北海道から滋賀県の範囲にあった我が国での本種の分布域は広島県にまで拡大した。本記録により, 広島県のサケ科魚類から記録された寄生虫は6種, 太田川水系のサケ科魚類から得られた寄生虫は3種となる。採集地におけるヨコエビ類を中間宿主とする本種の生活環について考察するとともに, 河川工事が終宿主や中間宿主, 本種に与える影響について論議した。本種とSalvelinema属の両者にマスウキブクロセンチュウ(鱒鰾線虫)の新標準和名を提唱する。