このエントリーをはてなブックマークに追加
ID 31813
file
creator
Hirotsune, Masato
NDC
Manufactures
abstract
酒類醸造業界の最大懸案事項は、醸造工程の合理化による製造原価の低減と、新規な酒類の開発による酒類消費量の増大である。本研究は、このような背景のもとで、バイオリアクターの導入による清酒醸造工程の自動化、並びに新品質の製品開発の可能性を検討した。すなわち、第1章では、まず、清酒醸造の技術的現状を分析し、これにバイオリアクターを導入することの意義、及び関連する当面の問題点を考察した。

第2章は、清酒の連続醸造に不可欠な雑菌汚染対策の確立に関するものである。米粉糖化液を用いた実験室規模のモデル系において、糖化液貯留用の前槽中に、固定化酵母リアクターから遊離する多量の酵母をプールして予備醗酵させ、前槽液中のアルコール濃度を4%以上に保つことにより、pH未調整の無殺菌糖化液を醗酵原料として、本リアクターを、長期間、安全に運転することを可能にした。

第3章では、白米を原料として本連続醗酵系のスケールアップと最適運転条件を検討し、①前槽中の遊離酵母を高濃度(108/ml)に保つこと、及び、②前槽中の溶存酸素濃度を、酵母の増殖を許容する最小限度(0.01ppm)の嫌気条件に制限することにより、良好な風味を持つ清酒製品を収率よく生産できることを示した。

なお、本連続醗酵系による製品は、爽快な酸味を持つアルコール濃度10~12%の新しいタイプの清酒である。これに関連して、焼酎用麹の味醂製造への応用により、爽快な酸味と濃厚な風味を持つ新しいタイプの味醂が得られることを示し、爽快な酸味の付与が、新規酒類開拓の一つの方向であることを示唆した。

第4章は、清酒の連続醗酵の動力学的検討に関するもので、まず、前槽中の遊離酵母の増殖及び醗酵速度式、糖及びアルコールの固定化酵母ゲル中の拡散抵抗等を考慮した通常のモデル、及び、活性係数という新しい概念を用いて簡素化したモデルについて、本連続醗酵系の運転で得られる実測値との整合性を検討し、この簡素化モデルにより良好なシミュレーションが可能であることを検証した。また、このモデルを用いてシステムの操作条件と必要な装置容量が算出できることを示した。

次に、ニューラルネットワークの一つであるバックプロパゲーションを用いて、回分式のアルコール醗酵における菌体濃度のシミュレーターを構築した。このシミュレーターでは、学習の際の入力値および教師信号をファジィ化するので、高いロバスト性を示し、未学習の入力値に対しても実測値に近い出力を行う。

第5章は、本バイオリアクターシステムのオンライン計測および制御に関するものである。まず、質量流量計を用いるCO2ガス発生速度の監視により、連続醗酵槽内のアルコール濃度を、精度良くオンライン測定する系を構築した。本測定系では、用意した簡単な学習則により、未同定の換算定数も、醗酵途中のアルコール濃度実測値の繰返し代入(10回程度)により推定可能であり、精度がさらに向上する。

次に、質量流量計によるアルコール濃度測定下に、前槽は適応制御で、また、固定化酵母リアクターはファジィ制御で、それぞれ運転するオンライン制御システムを構築し、前槽中のアルコール濃度を目標値に対して、0.05%以内に、また、リアクター内のアルコール濃度を設定値の0.02%以内に、それぞれ制御できることを示した。なお、前槽内温度経過に生ずる若干の乱れの調整に必要な酵母増殖速度式中のパラメーターは、ファジィ理論により作成した学習則を用いて求めた。

以上の検討結果を総括することにより、固定化酵母リアクターと、多量の遊離酵母を含む前醗酵槽を結合したバイオリアクターシステムの開発が、爽快な酸味を持つ新規タイプの低アルコール清酒の、安定な連続生産を可能にした。さらに、質量流量計を用いたアルコール濃度のオンライン測定系の開発が、本バイオリアクターシステムの、オンライン制御を可能にした。すなわち、清酒醸造工程の自動化、並びに新品質の製品開発という懸案事項に対して、本バイオリアクターシステム導入の有用性を指摘した。今後は、従来の伝統的な清酒醸造法と共に、自動制御化されたバイオリアクターを利用した、新しい清酒の連続醗酵法が、発展していくものと期待される。
contents
目次
第1章 序論 / p1
 文献 / p6
第2章 米粉糖化液の連続醗酵における雑菌汚染対策 / p8
 実験方法 / p10
 実験結果と考察 / p12
 要約 / p23
 文献 / p24
第3章 清酒の連続醸造と新規酒類の製造 / p25
 A.バイオリアクターによる清酒醸造の最適化 / p26
  実験方法 / p27
  実験結果と考察 / p27
  要約 / p44
 B.しょうちゅうこうじを用いたみりんの製造 / p45
  実験方法 / p45
  実験結果 / p47
  考察 / p51
  要約 / p53
  文献 / p54
第4章 清酒の連続醗酵に関する動力学的検討 / p55
 A.固定化酵母と遊離酵母のアルコール生成速度式 / p57
  実験材料と方法 / p57
  実験結果と考察 / p60
  要約 / p80
  記号 / p81
 B.ニューラルネットワークによるアルコール醗酵プロセスの菌体濃度の同定 / p85
  実験材料と方法 / p87
  結果と考察 / p87
  要約 / p102
  記号 / p103
  文献 / p105
第5章 清酒の連続醗酵におけるオンライン制御 / p107
 A.質量流量計を使用したアルコール濃度のオンライン測定 / p108
  実験材料と方法 / p110
  結果と考察 / p113
  要約 / p130
  記号 / p131
 B.清酒連続醗酵システムのアルコール濃度のオンライン制御 / p132
  実験材料と方法 / p133
  結果と考察 / p141
  要約 / p153
  記号 / p154
  文献 / p156
第6章 総括 / p158
謝辞 / p161
公表論文 / p162
SelfDOI
language
jpn
nii type
Thesis or Dissertation
HU type
Doctoral Theses
DCMI type
text
format
application/pdf
text version
ETD
rights
Copyright(c) by Author
relation references
・固定化酵母を用いた米糖化液の連続醗酵. 広常正人、仲田冨士男、浜地正昭、本馬健光、日本醸造協会雑誌 第82巻 第8号 582-586 (1987)
・固定化酵母による清酒の連続醗酵. 広常正人, 日本醸造協会誌 第85巻 第1号 13-19 (1990)
・Production of soft type sake by an immobilized yeast reactor system. Y. Nunokawa and M. Hirotsune, Industrial Application of Immobilized Biocatalysts. (1992) in press
・しょうちゅうこうじを用いたみりんの製造. 布川彌太郎、椎木敏、広常正人、日本醸造協会雑誌 第77巻 第2号 123-125 (1982)
・清酒の連続醗酵に関する動力学的研究. 松浦一雄、広常正入、仲田冨士男、浜地正昭、醗酵工学会誌 第69巻 第5号 345-354 (1991)
・ニューラルネットワークによるアルコール醗酵プロセスの菌体濃度の同定. 松浦一雄、広常正人、仲田冨士男、浜地正昭、醗酵工学会誌 第69巻 第6号 463-469 (1991)
・連続醗酵における質量流量計を使用したアルコール濃度のオンライン測定. 松浦一雄、広常正人、仲田冨士男、浜地正昭、醗酵工学会誌 第69巻 第5号 355-362 (1991)
・清酒の連続醗酵におけるオンライン制御. 松浦一雄、広常正人、仲田冨士男、浜地正昭、醗酵工学会誌 第69巻 第6号 455-461 (1991)
relation references URL
http://dx.doi.org/10.6013/jbrewsocjapan1915.82.582
http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.Journalarchive/jbrewsocjapan1988/85.13
http://dx.doi.org/10.6013/jbrewsocjapan1915.77.123
grantid
乙第2253号
degreeGrantor
広島大学(Hiroshima University)
degreename Ja
博士(工学)
degreename En
Engineering
degreelevel
doctoral
date of granted
1992-03-16
department
Graduate School of Engineering