ID 31753
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医学
抄録
Candidaの義歯に対する付着機構の解明は、義歯性口内炎の治療あるいは予防においても重要であると考えられている。このようなCandidaの付着に関して、疎水的相互作用、静電的相互作用などの非特異的付着因子あるいはadhesin-receptor相互作用による特異的付着などの関与が報告されており、in vivoにおける付着では、これらの付着因子が複雑に関与していると考えられる。このため、従来行われている唾液コートしたレジンを被着体とした系などによっては、付着因子の解析が困難であると考えられる。そこで、本実験では、既知の性質を有する修飾ガラスを用いて、Candida特に、C. albicansおよびC. tropicalisの付着に関与する因子について検討を行った。

まず、Satouらの方法により作製した4種の修飾ガラスを用いて、Candida6菌株の固体表面に対する非特異的付着についての検討を行った。その結果、付着は、菌体および被着体表面の物理化学的性質により左右され、疎水性の高い菌株の付着では疎水的相互作用が強く関与し、疎水性の低い菌株では静電的相互作用が重要であることが示唆された。

しかしながら、in vivoにおいては、義歯表面には、唾液タンパクあるいは血清タンパクなど種々のタンパクから構成されるペリクルが存在することが知られている。このように被着体表面にタンパクが吸着している場合には、非特異的付着因子だけでなく、特異的付着因子が同時に関与すると考えられている。従って、数種の唾液タンパクおよび血清タンパクを固定化したガラスを用いて、C. albicansおよびC. tropicalisのタンパクの存在する表面に対する付着について検討した。

その結果、特異的付着においては、菌体表層のマンナンの関与に比べ、被着体表面に存在する糖鎖がより強く関与していることが示唆された。また、C. albicansの付着では、このような被着体表面の糖鎖に対する特異的付着の関与に加えて、静電的相互作用の関与を認めた。

一方、C. tropicalisでは、被着体表面の糖鎖に対する特異的付着の関与に加えて、疎水的相互作用の関与を認めた。このような被着体表面に存在する糖鎖に対する特異的付着をより詳細に検討する目的で、その表面に一種類の糖のみを固定化したガラスを作製し、この2菌株の特異的付着に関与する糖残基の検討を行った。その結果、C. albicansの特異的付着には、マンノース, マンノサミン, ガラクトサミンおよびフコースが、receptorとして関与しており、さらに、付着阻害実験から、これらの糖に対する付着は、boardな特異性によることが示唆された。また、C. tropicalisの特異的付着には、グルコサミンが関与していることが明かとなった。

このように、Candidaの付着において、被着体表面および菌表面の物理化学的性質により疎水的相互作用および静電的相互作用が関与しており、さらに、種々の糖に対する特異的付着も同時に関与していることが明らかとなった。そして、in vivoにおける細胞や義歯へのCandidaの付着は、このような非特異的および特異的付着因子の各菌株における付着への寄与の違いによって左右されていると考えられるため、これらの付着因子の寄与をモデルによって検討した。すなわち、疎水的相互作用の関与を調べる目的で、唾液コートしたレジンとほぼ等しい接触角を示す親水性ガラス群およびレジンとほぼ等しい接触角を示す疎水性ガラス群を作製した。また、特異的付着のモデルとして糖固定化ガラスを、さらに、静電的相互作用の関与を調べる目的で、アミノ基を固定化したガラスを作製し、三元配置分散分析により、この2菌株の付着における疎水的因子、静電的因子および特異的付着因子の寄与率を算出した。その結果、C. albicansの付着においては、静電的相互作用および特異的付着の関与が大きく、C. tropicalisの付着においては、疎水的相互作用が重要であることが示唆された。

以上、Candidaの固体表面に対する付着に関与する因子を検討した結果、その付着には、菌体および被着体表面の性質により非特異的付着因子および特異的付着因子が関与し、特に、C. albicansの付着においては、静電的相互作用および特異的付着因子の関与が重要であり、C. tropicalisの付着においては、疎水的相互作用が、より重要であることが示された。
目次
論文内容要旨 / p2
目次 / p4
第I章 緒論 / p1
第II章 Candida属の非特異的付着 / p3
 第1節 概要 / p3
 第2節 修飾ガラスの作製およびその性質 / p4
  第1項 修飾ガラスの作製 / p4
  第2項 修飾ガラスの疎水性 / p4
 第3節 Candidaの培養条件 / p6
 第4節 Candidaの物理化学的性質 / p8
  第1項 疎水性の測定 / p8
  第2項 ゼータ電位の測定 / p12
 第5節 Candidaの付着 / p15
 第6節 考察 / p18
第III章 Candida albicansおよびCandida tropicalisの固定化タンパクに対する付着 / p21
 第1節 概要 / p21
 第2節 タンパク固定化ガラスの作製およびその性質 / p22
  第1項 カルボキシル基固定化ガラスの作製および活性化 / p22
  第2項 唾液採取および使用タンパクについて / p22
  第3項 タンパク固定化ガラスの作製および定量 / p23
  第4項 タンパク固定化ガラスの疎水性 / p25
  第5項 タンパク固定化ガラスのゼータ電位 / p28
 第3節 C. albicansおよびC. tropicalisの付着 / p28
  第1項 培養条件 / p28
  第2項 固定化タンパクに対する付着 / p31
  第3項 特異的付着に関する検討 / p35
  第4項 付着阻害実験 / p42
 第4節 考察 / p42
第IV章 Candida albicansおよびCandida tropicalisの特異的付着 / p48
 第1節 概要 / p48
 第2節 糖固定化ガラスおよびコントロールガラスの作製およびその性質 / p49
  第1項 糖固定化ガラス作製 / p49
  第2項 コントロールガラス作製 / p49
  第3項 修飾ガラスの定性および定量 / p52
  第4項 修飾ガラスの疎水性 / p54
 第3節 C. albicansおよびC. tropikalisの付着 / p56
  第1項 使用菌株および培養条件 / p56
  第2項 付着実験 / p56
 第4節 糖 付着阻害実験 / p61
 第5節 考察 / p63
第V章 Candida albicansおよびCandida tropicalsの非特異的および特異的付着 / p70
 第1節 概要 / p70
 第2節 修飾ガラスの作製およびその性質 / p71
  第1項 コントロールガラス作製 / p71
  第2項 カルボキシル基固定化ガラス作製 / p71
  第3項 アミノ基固定化ガラス作製 / p71
  第4項 糖固定化ガラス作製 / p73
  第5項 糖およびアミノ基固定化ガラス作製 / p73
  第6項 修飾ガラスの定性および定量 / p74
  第7項 修飾ガラスの疎水性 / p77
 第3節 C. alibicansおよびC. tropicalisの付着 / p80
  第1項 培養条件 / p80
  第2項 付着に対する付着因子の寄与 / p80
  第4節 考察 / p86
第VI章 結果の要約 / p89
第VII章 考察 / p91
試薬 / p96
参考文献 / p98
SelfDOI
言語
日本語
NII資源タイプ
学位論文
広大資料タイプ
学位論文
DCMIタイプ
text
フォーマット
application/pdf
著者版フラグ
ETD
権利情報
Copyright(c) by Author
学位記番号
甲第868号
授与大学
広島大学(Hiroshima University)
学位名
博士(歯学)
学位名の英名
Dentistry
学位の種類の英名
doctoral
学位授与年月日
1990-03-26
部局名
医歯薬学総合研究科