学習システム研究 5号
2017-03-31 発行

道徳性は何をどのように学ぶことができるのか : スティーブン・エレンウッド論文が示唆するもの

How can we learn morality and what do we learn from it? : The implications of Stephan Ellenwood’s paper
河村 哲太
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抄録
 アメリカにおける道徳教育や学習科学分野の研究は我が国でもこれまで多く紹介されてきたが,その多くは教育動向を整理し,教授(teaching)の側面に焦点化したものであった。道徳性に関して学習者が何をどのように学ぶことができるのか,という学習(learning)の側面に焦点化した問いに関してアメリカでも問われてこなかった。アメリカでこの問いに取り組んだのがスティーブン・エレンウッドであり,彼のHow do we learn Virtue, Character, Morals and Social Responsibility?である。
 エレンウッドはまず,道徳性などの対象(何を学ぶのか)に関して検討し,「品性の問い」として規定する。それは,道徳性の学びの対象である教育内容を,素直さや親切さといった人間としての良さを表している。次に,方法(どのように学ぶか)に関しては,①論理実証的な学習である命題的分析,②文学的情緒的な学習である物語的分析,③個人内的な学習である経験と深い省察の3 つに整理している。
 エレンウッド論文は日本の学習科学と道徳教育に大きな示唆を与えている。まず学習科学については,学習者の認知的な側面だけでなく情緒的な面を含んだ学習を視野に入れている点,両側面を含んだ3 つの学習を具体的に示している点を挙げることができる。次に道徳教育に関しては,事例を踏まえて道徳性を学ぶ3つの学習を具体的に示している点,各学習の意義だけでなく限界をも示している点である。これらの示唆から,子どもの道徳性の伸長のためにそれら3 つの学習を相互補完しながら組み合わせて教育を創造することの重要性を指摘した。
キーワード
市民性教育
学習科学
道徳教育
Civic Education
Educational Sciences
Moral Education
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