学習システム研究 4号
2016-03-31 発行

地理学者集団における「真正な実践」の変容・成長の解明 : 同一地域をめぐる異なる時代の研究を比較して

Transformation and Growth of Geographers’ “Authentic Practice” : Comparative Studies on Geographers’ Researches Examining on the Same Region but Conducted by Different Generation
大坂 遊
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抄録
本研究は,専門科学者がおこなう「真正な実践」の解明に向けたシリーズ研究のうち,知識の社会領域の中でも地理学者の研究に注目し,「地理学者ならではの学びの過程とはどのようなものか」「その過程は,地理教師が教材研究として地理学論文を読み解く上でどのように活かすことができるか」を解明することを目的とする。そのために,時代の異なる2つのインド地域研究の成果報告書を対象に,(1)研究の目的と方法,(2)地域の選定,(3)記述のスタイルと構成を比較することで,地理学者の学びがどのように変化・成長しているのかの解明を試みた。分析の結果,以下のことが明らかになった。2つの時代の研究は,(1)地誌学研究のパラダイムの変化や時代の要請などをふまえて,研究の問題意識が,「農村地域の社会経済構造の把握」から「地域格差とそれを解消する条件の解明」へと変化・深化していること,(2)いずれも同じインド農村地域をフィールドに取り上げる点では共通するものの,継続的な調査活動による研究者同士・現地住民との人脈ネットワークの開拓によって,より主体的・目的合理的に調査地域を選定できるようになっていること,(3)対象地域で収集したデータの,集落の立地と形態,人口と社会,村の経済を窓とする画一的な記述から,地域を特徴づけるテーマに焦点化した構造的な説明へと変化していること。これらの3点が明らかとなった。またそこから,時代を越えて研究を継続的に修正・深化させる地理学者集団の学びの特質が示唆された。最後にこれらの成果をふまえて,同一地域の研究成果の時系列比較が,教科書記述の意図とコンテキストの理解には有益であることを指摘した。
キーワード
地理学
地理学者集団
地域研究
真正な実践
インド
Geography
Group of Geographers
Regional Studies
Authentic Practice
India