学習システム研究 4号
2016-03-31 発行

真正な数学的活動としての証明の再構成活動 : 「真正な数学的活動」概念の反省

Reconstruction of Proofs as “Authentic Mathematical Activities” : Reflection on the Concept
上ヶ谷 友佑
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抄録
本稿の目的は,「真正な数学的活動」という概念の反省である。本稿では,数学書の比較分析を行い,数学者の活動の実態の推定を試みた。具体的には,齋藤正彦著『数学の基礎:集合・数・位相』と松坂和夫著『集合・位相入門』を取り上げ,特に,連続写像の定義と条件の同値性の証明に関して,両著作の記述内容の差異を調べた。その結果,(1)松坂の著作においては丁寧に証明されている事柄が,齋藤の著作においては「あきらか」であるとして大胆に省略されている場合があること,(2)松坂の著作においては集合論の表現をふんだんに用いて証明が記述されている事柄が,齋藤の著作においては中間的な概念を潤沢に採用することで,集合論の表現を直接用いずに証明が記述されている場合があること,という2点を指摘した。これらの差異から,数学者にとって,証明を書く活動とは,未知な定理の証明を書く場合であれ,既知の定理に対して既知の証明を参考にしながら新しく証明を構成する(証明を再構成する)場合であれ,普遍的かつ理想的な無機質な文章を書く活動というよりはむしろ,特定のターゲット層を読者として想定した人間的かつ暗黙的なメッセージを含ませ得る文章を書く活動である,ということが推定できた。本稿では,このことから得られる数学教育への示唆として,特定のターゲット層を読者として想定した既知の証明の再構成活動の真正性を指摘した。これは,今まで数学教育研究が着目してこなかった,新しい着眼点である。
キーワード
数学教育
真正な数学的活動
証明
数学者の思考
Mathematics Education
Authentic Mathematical Activities
Proofs
Mathematicians’ Thinking
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