学習システム研究 4号
2016-03-31 発行

論文読解比較による「真正な学び」の過程の記述 : 文章構造把握に関わる研究の時間的比較を通して

Description of the Process of “Authentic Learning” Based on Comparative Thesis Reading Comprehension : Temporal Comparison of Research Related to Sentence Structure Awareness
村井 隆人
本文ファイル
抄録
本稿は大学院生が複数の論文を比較し,どのように読解すると言語学における研究内容の発展を読み取ることができるのかを究明した。具体的には,文章論,テクスト言語学の論考を主な対象とし,文章構造把握に関係する研究の発展を時間的比較から捉えた。

まず,立川和美と市川孝の論考の比較を行った。その際,(a) 新しい論文における先行研究の紹介や比較,評価の記述に着目する,(b) 新しい論文の方法論などにおいて先行研究を踏襲している部分と新たに設定された部分を明確にする,(c) 新しい論文で扱われている概念について,読み手の既有知識に照らして疑問・批判がある部分に着目する,という三つの観点から読み深めを行い研究内容の発展を捉えた。

次に,より広く立川の論考の発展を捉えるために,認知心理学の文章理解研究の概説書を読解した。ここでは,文章の理解の要因を文章の要因,読み手の要因,読み方の要因の3つから捉えた。その結果,立川の論考は従来の言語学と同様,文章の要因に焦点をあてたものであり,一方で,文章理解研究が解明してきた読み手の要因についても扱ったものであると捉えることができた。加えて,文章理解研究では十分に扱ってこなかった文章の要因に焦点をあてている点に,立川の論考の意義を見出すことができた。

このように,論文比較読解においては上のような観点から読むことや,論考の位置づけを捉えるための重要な概念を理解することで,深い理解に到ることができた。このような学びの過程を明らかにすることは,学校教師が教材研究を行う際に,専門領域の論文の読解を通して学習を行う過程の解明や,それを基にした学習の支援の在り方の追求に役立つと考えられる。
キーワード
真正な学び
説明的文章
文章構造把握
時間的比較
Authentic Learning
Expository Text
Sentence Structure Awareness
Temporal Comparison