学習システム研究 2号
2015-03-31 発行

高等学校化学における「学び」の過程に関する理論的検討 : 理科教師が行う教材化や教材開発の視座を中心として

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抄録
本稿は,専門領域の研究論文を専門科学者の「学び」の過程に読み替え,さらに学習者の「学び」の過程に再構成することを通して,理科教師が教材化や教材開発を行う視座に関する示唆を得ることを目的とした。Journal of Organometallic Chemistry 誌に掲載された論文を構造的に読解し,執筆者に対する論文(研究)の作成過程に関するインタビュー調査結果を基に,専門科学者の「学び」の過程への読み替えを行い,教材化や教材開発を行う上で求められる視座について分析・検討を行った。その結果,専門科学(研究)者の「学び」の過程とは,専門科学者が数多くの実験を試行する中で新しい発見や次に繋がる研究テーマを見いだしていく研究スタイル(学習過程)であり,経験したことを基に試行錯誤や条件制御をしながら,実験プランや次の研究テーマを考えていくことになるという発見的な実験を主流としたものであった。この専門科学者の「学び」の過程を,理科教師が行う教材化や教材開発の文脈に置き換えた場合,高等学校化学の実験は,どちらかといえば,与えられた実験で結果は決まっているが,とはいえ,実験を行う本人としては初めての体験である。従って,そこには多かれ少なかれ,実験を行った本人にとって何かしらの新しい発見があり,予想外のことが起きる要素はあるという視点が重要である。また,本研究により,理科教師が「科学者による知的生産の知 (scholarly knowledge)」の創成プロセスとその転置メカニズムについて知ることも,教材研究を行う上では重要な位置付けとなることが見出された。
キーワード
高等学校化学
「学び」の課程
教材化・教材開発
High School Chemistry
A “Learning” Process
Teaching Material Development