学習システム研究 2号
2015-03-31 発行

歴史学者がおこなう「真正な実践」の解明 : 歴史教師による自律的な教材研究に向けて

渡邉 巧
中山 富広
本文ファイル
抄録
本研究は,専門科学者がおこなう「真正な実践」の解明に向けたシリーズ研究のうち,知識の社会領域の中でも歴史学者の研究に注目し,「歴史学者ならではの学習過程とはどのようなものか」「その学習過程は,歴史教師が教材研究をおこなう上でどのように活かすことが可能か」を解明することが目的である。そのために,歴史学論文の構成・構造分析と論文著者へのインタビューをもとに,歴史学者の研究過程とその背景を分析する。これを,歴史学者ならではの学びの過程として読み替えていく。本稿では,近世史の視点から近代史の研究課題に挑んだ2008年の論文「地租改正における地価決定と収穫高-広島県恵蘇郡奥門田村を事例として-」とその著者である歴史学者の中山富広を研究対象とした。結果,論文執筆に際しての研究過程は,「研究デザインの構築」「研究デザインに基づく実証研究」「研究デザインの省察と意義付け」という段階を経ていることが明らかになった。そして,論文執筆の背景にある学びとしては「研究経験」「専門領域や周辺領域に関する学界動向の学び」「他者との交流」「教育経験」という側面が確認できた。ここから学びとった概念や方法を,自分なりに再構成し,他の研究者共同体や自分の研究者共同体に適用するというアプローチが繰り返しおこなわれていた。以上を踏まえて,歴史学者の学習過程を理解する上で求められる視点として,「活用されている史料と解釈の対応関係を把握すること」「解釈を論文として説明する際に活用されている語彙の意味を理解すること」「論文の生成される文脈,研究史を学習すること」の3点を提案した。歴史学者の真正な学びとは,史料,史料を説明するための語彙,語彙を生み出す背景にある研究史に関わったものである。これらを読み解くことで,歴史教師は歴史学者の論文を深く理解し,教材研究に活かすことができる。
キーワード
歴史学者
研究者共同体
専門的語彙
史料と解釈
研究史
Historian
Community of Researcher
Technical Vocabulary
Historical Sources and Interpretations
History of Study
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